脳画像・脳生理計測による精神疾患・症状の解明
Clinical and Population-based Neuroimaging and Neurophysiology
精神疾患はこころの問題のなかで最も重要なもので、その原因はさまざまですが、最終的には脳の機能障害が起こっていると考えられています。さらに、「うつ症状」「幻覚」といった、病的ではないが一時的に現れる精神症状も脳構造・機能に特徴的な違いがあることがわかってきました。そして、精神疾患と精神症状の境界は明確なものではありません。本研究室では、主に磁気共鳴画像(MRI)を用いた脳構造・機能画像計測(Neuroimaging)を用いて、精神疾患・症状の解明、臨床応用可能な客観的指標(バイオマーカー)の開発を目指します。特に、思春期脳発達、精神疾患を対象にした脳画像の多施設共同研究プロジェクトの中核を担っています。
コホート研究による思春期発達と精神症状の関連解明
Epidemiology
精神疾患には、出生体重、両親の離婚、戦争や災害などのトラウマ体験、いじめなど、様々な環境要因が発症因子や予後予測因子となることが分かっています。こうした精神疾患でみられる特徴が、より幅広くとった精神症状を有する群でもみられることが最近明らかになりつつあります。これらの研究を可能にするのが疫学(コホート研究)といわれるものです。近年では、脳画像計測を組み合わせるバイオバンクも注目されています。本研究室では、東京都の一般健常思春期3000名を対象としたコホート(東京ティーンコホート)、英国出生コホート等を用いて、大規模データの解析を通して思春期発達と精神症状・精神疾患の関連解明を目指します。最近は特に、思春期と精神疾患を組み合わせた統合的な脳構造・機能解析を行っています。
精神疾患へのスティグマ形成過程の解明と精神保健教育への実装
Mental Health-related Stigma
スティグマとは、偏見や差別によって個人の行動や社会が変容することを言います(日本語訳では差別や偏見と置き換えて問題はありません)。精神疾患へのスティグマは、現在においても大きな社会問題であり、スティグマを軽減することによって、その人の人生さえ変えることができると考えられています。精神疾患へのスティグマを少なくする戦略としていくつか挙げられていますが、科学的根拠が乏しい状況でした。本研究室では、「根拠に基づくアンチスティグマ活動研究会」を主催し、日本におけるスティグマ軽減戦略の研究拠点として世界的にも注目されてきています。今後、なぜ人が人を差別するのかを生物・心理・社会学的に解明するとともに、教育・啓発活動に還元することを目指します。