中脳腹側被蓋野(VTA)に着目したMRI研究

これまで多くの精神疾患では、ドパミンシステムの障害が指摘されてきました。ドパミンは、おもに中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area, VTA)で生成されていることから、VTAを中心とした神経ネットワークをさまざまな精神疾患の間で比較・検討することは、精神疾患の神経病理を解明するうえで意義深いといえます。しかし、脳MRI画像では、VTAはほかの領域と似たコントラストを示していて、同定するのが難しく、あまり検討されてきませんでした。

そのため本研究では、安静時の機能的MRIデータ用い、VTAと関連がある脳領域を同定する機能結合マップの解析法を確立し、大うつ病を持つ方45名、統合失調症を持つ方32名、双極性障害を持つ方30名、そして健常対照46名で比較検討しました。当初、精神疾患を持つ群では機能結合が弱くなることを想定していましたが、健常対照群と比較し、大うつ病群と双極性障害群では、上前頭回、前頭極、後帯状皮質、海馬、小脳とVTAとの機能的結合が大きくなることがわかりました。さらに、統合失調症群と健常対照群では、機能結合に違いがみられませんでした。また、統合失調症群では、海馬とVTAの機能結合の強さが強いほど、強い陽性症状を示すことがわかりました。

今後、これまでわからなかったドパミンに関する神経系と脳機能画像の関係を順次明らかにしていきたいと考えています。

Nakamura Y, Okada N, Kunimatsu A, Kasai K, Koike S: Anatomical templates of the midbrain ventral tegmental area and substantia nigra for Asian populations. Front Psychiatry2018;28(9):383.

Nakamura Y, Okada N, Koshiyama D, Kamiya K, Abe O, Kunimatsu A, Okanoya K, Kasai K, Koike S: Differences in functional connectivity networks related to the midbrain dopaminergic system-related area in various psychiatric disorders. Schizophr Bull 2020 in press.

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