スティグマ研究

なぜ偏見や差別が起こるのか、を科学的に明らかにする

「スティグマ(stigma)」は、簡単に言うと偏見や差別のことで、より正確に言えば、偏見や差別によってその人の行動を変化させたり、制限させたりする変化を含む意味です。「根拠に基づくアンチスティグマ活動研究会」(Research Group for Evidence-based Anti-stigma Activity)では、日本における精神疾患へのスティグマや、アンチスティグマ活動の有効性を、科学的根拠を示しながら開発、啓発してきました。また、研究成果に基づいた教材の開発を行ってきました。

 いっぽう、そもそも、なぜ人が人を差別するのか、より根源的な問いについてはまだほとんどわかっていません。とくに精神疾患は、ほかの身体的特徴と比べてわかりづらいため、精神疾患当事者へのスティグマをもつには、より高次な認知機能を必要とすると考えられます。思春期では身体的な発達に加え、精神機能も大きく発達します。特に、メタ認知機能(他者と比べて、自分の今の状況を把握する能力)、自己制御機能(短期的な報酬を我慢して長期的な目標に向かう能力)の発達は、より大きな社会関係を持つためには必須です。この発達過程で個人の価値観は、家族などの狭いコミュニティから垂直に伝達された価値観(価値感覚)から、ピアとともに形成する水平的な価値観形成を行うと考えられます。この価値観形成にスティグマ形成も深く関係していると考えており、調査を継続しています。


日本人のメンタルヘルスに関する認識

根拠に基づくアンチスティグマ活動研究会で行った研究成果を、スティグマの基礎知識とともにわかりやすく紹介しています。2021年に、学校メンタルヘルス教育の拡充やスティグマ研究の進捗について大幅に更新しました。冊子版もあります。

これまでの研究成果

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本研究室以前の主要な研究成果

  • Koike S, Yamaguchi S, Ojio Y, Ohta K, Ando S: Effect of name change of schizophrenia on mass media between 1985 and 2013 in Japan: a text data mining analysis. Schizophr Bull 2016;42(3):552-9.[プレスリリース]
  • Koike S, Yamaguchi S, Ojio Y, Shimada T, Watanabe K, Ando S: Long-term effect of a name change for schizophrenia on reducing stigma. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 2015;50(10):1519-26.[プレスリリース]
  • Yamaguchi S, Koike S, Watanabe K, Ando S: Development of a Japanese version of the reported and intended behaviour scale (RIBS-J): reliability and validity. Psychiatry Clin Neurosci 2014;68(6):448-55.
  • 小池進介, 大島紀人, 渡辺慶一郎, 笠井清登: 【これからの地域精神保健:大震災の経験から学ぶ】 (第5章)生活に根差した精神保健活動 学校メンタルヘルス. 精神科臨床サービス 2012;12(2):240-2.
    [Link]
  • 小池進介, 市川絵梨子: 【社会の中の統合失調症】 学校教育(高校・大学におけるメンタルヘルス教育) in 統合失調症第5巻. 石御岡純, 後藤雅博,水野雅文, 福田正人編 医薬ジャーナル社. 2013:53-60 
    [Link]
  • 小池進介, 西田淳志, 山崎修道, 安藤俊太郎: Nature 誌編集長 Philip Campbell 氏に聞く : 精神疾患のための10年 (A Decade for Psychiatric Disorders). 精神神経学雑誌 2012;114(5):508-16.
    [Link]

主な共同研究機関

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